アンティークチェアの修理
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座面を上からはめ込むタイプ(ねじで止められていない)のダイニングチェア。100年近く前に作られているであろう木の痛み具合で、殆どの接合部が緩み座れない状態でした。
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いつものように慎重に解体し、状態を見ていきます。外していくと、中の構造が明確になります。修理前にはこのようにして、この家具にとって最良な修理方法を考えていきます。
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4脚あるので、一脚ずつ解体し、部品が混ざらないようにそれぞれでまとめておきます。
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こちらはすべて解体した状態です。
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部品を一本一本見ていくと、この様に縦にひび割れがありました。この割れ方は経年劣化による木の動き(環境変化によって含水率が変わり木の収縮で割れるなど)と考えられました。この大きな割れは、構造的に良くないので、部材の作り直しをしていきます。
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同じ材種の木を切り出し、全く同じ形に加工。接着前に仮組みして、しっかり組めることを確認します。
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着色は仮組の後、一度取り外し、オリジナルの色を見本に塗装します。
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着色後、組んでいきます。組む前には古くなった糊を丁寧に取り除き、新しい糊がしっかり接着できる状態にしておきます。
この作業に結構時間がかかります。もし、少しでも接着面に段差が出来るとピッタリ嵌まってくれないので、構造本来の強度が落ちてしまうからです。 -
組む前にはホゾとほぞ穴の最終チェックをします。
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変な状態で固まらないように、組み上げた後に、並行と、前後の歪み、接合部の隙間がないか一か所ずつ確認します。
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糊付けし、動かさないように24時間以上放置します。固まれば、張り替えた座面をはめ込み修理完了です。
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アンティーク感を残すため、木部の再塗装などは行いませんでした。
100年近く前に作られたと思われるアンティークの椅子。お母様が一目惚れして購入されたそう。修理のために工房にお持ち込みいただいた際、左右に大きく揺れ、座るのが危ない状態でした。写真の通り、わりと簡単に全ての部材がバラバラに外れました。また、よく見ていくと、縦に亀裂が入っていたり、部材の真ん中から大きな割れがあったり。その箇所は、今後の事も考え、新しい木で作り直すことになりました。ホゾの嵌め合いを調整し、いつものように組み直すと、しっかりと固まり息を吹き返しました。