
総無垢の花梨材に螺鈿細工がふんだんに施された中国様式を思わせるキャビネット。今回はこちらの天板の破損修理のご依頼を頂きました。

横から見るとよくわかるのですが、意匠として天板の左右端に反りを成形した材を接いでいます。その部材が折れてしまっております。

お預かりした当時は、お客様が応急処置として使用した接着剤でかろうじてつながっている状態でした。

このように断面部は木繊維の破断と膨張、接着剤の浸透によって段差と隙間が生じてしまい、自然な貼り合わせ圧着は不可能でした。

取れたパーツに加え、根元部分も割れが生じています。

まずは既存の接着剤を確実に除去します。使用する接着剤の成分の違いによって、残留した接着剤による悪影響が強く出る懸念があります。少しの接着不良が耐久年数を左右しますので、健康な木部が現れるくらいギリギリまで削り落とします。

断面の脱脂処理を行い、補強材を埋め込むための加工を行います。棒材を骨にして組み圧着をします。

構造的に非常に圧着しづらいのですが、何とか足場を作ってクランプで均一に締めます。


亀裂全てをカバーするように当て木も工夫します。


圧着が終わったら、大きな段差を鑿でさらい、あとはひたすらにペーパー掛けを行い、何度も手触りを確認して段差を確認します。削りが足りなくても、削りすぎても仕上がった際の光沢に違和感が出るので非常にシビアな作業です。ある程度形状の目処が立ったら、パテ処理をして仕上げの削りを行います。下地処理が終わればあとは塗装の準備です。

まずは養生で区切り塗装します。

色味、厚みが整ったら養生を外します。

あとは境界線をぼかし塗装で艶を自然につなげます。非常に難しいです。

仕上がった木口です。一見、違和感なく収まっていますね。

天板鏡板の光沢はそのままなので、だいたい同じくらいの光沢に仕上がったかと思います。内カーブも自然に光が反射しています。とても時間がかかりましたが、下地処理一つで仕上がりの善し悪しが変わるので途中途中濡れ色を見ながら研磨作業をした甲斐がありました。

そしてお客様宅への納品設置です。


外側の部分もうまくまとまりました。

光の反射も均一です。

非常に風格があります。

完了です。
装飾で削り出された部材というのは形状や厚みなどの条件によって衝撃で破損しやすい場合もあります。
今回のように破損が酷く、通常の再圧着が難しい場合は補強材などで接いだり埋め込んだりして強度を確保しての加工を行うことが多いです。幸い無垢材だったので切削成形が出来たため、補修部分が目立つことなく収めることが出来ました。
破損の仕方でいろいろ修理方法があります。お困りの際には是非ともご相談ください。