
こちらのデスク。
お客様のお父様の形見のもので、現状のガタツキや塗装の劣化などの不具合を直して、受け継いで使用したいというご希望の修理依頼を頂きました。

全体的に塗装は劣化しており、ところどころ黒ずみや白化、塗膜のやせなどが見られます。


天板の木口あたりから接ぎ目に沿って隙間も見られます。こちらは裏側から楔を埋め込んで動きを抑える加工をします。

抽斗は傷んだ底板と本体に取り付けられたレール、こちらを交換します。



内部の左右に見える棒材のようなものが抽斗のレールです。こちらも劣化ですり減って変形しています。

こういった接合部の緩みも全体的にみられるので、解体して締め直しです。

抽斗側の側板です。
鏡板は突板のオーク材です。


まずは裏面でビス留めされている天板を外します。
ここから解体作業を行います。
釘が使用されている箇所や、亀裂が入っている箇所、組まれている箇所とパターンが複数あるため、自分が叩こうとしている部分をしっかり見極めながら少しずつ、確実に解体します。

ほぼ1日かけて解体しました。
次は剥離作業です。

経年の雰囲気はそのままに仕上げるようにするため、シンナー洗いとスポンジ研磨剤の軽めの研磨までで下地調整を行います。

材料そのままの雰囲気の仕上がりをご希望だったので、今回はクリア仕上げです。
これは水で濡らした時の濡れ色です。
塗装の時とは少し雰囲気は変わりますが、大体のイメージをお客様に一度確認いただきます。

次は抽斗のレール作りです。

製材した板をカットして、予めオリジナルの位置を墨付けした箇所に取り付け直します。

レールをビスで固定する前に、ピンネイルで仮留めをした状態で抽斗の入れ具合を調整します。もともとフレーム自体に歪みもあるため、見え方もあまりシビアになりすぎない程度に収まりや滑り具合を決定します。その後、ビスでレールを固定します。

天板の裏側のチギリです。

今回はラッカー塗装にて仕上げです。
天板と本体をそれぞれパーツごとに分けて塗装します。

仕上がった状態です。

経年の風合いも残したまま、良いビンテージ感のデスクに生まれ変わりました。

元の変色具合もありつつ、明るい表情です。引手の金具も磨き直しています。

接合部も無事、隙間なく綺麗に接着されています。

脚部の角のささくれダメージは、ペーパーで落としています。



抽斗の滑りもかなり快調です。

着色無しのクリア仕上げ、西日の光で飴色に強く照らされています。




天板も大部分の黒染みや白化のダメージも消えて、かなりリフレッシュされた状態です。

あとまた半世紀以上は使用できるかと思います。
今回、お客様の思い入れの強い家具の修理のご依頼ということで、慎重さを重ねて作業の都度ご相談をさせて頂きながら進行致しました。
納品設置時には、大変お喜び頂きました。
ありがとうございます。