
こちらはダイニングチェアのグラつきの締め直し修理の御依頼です。

全ての部材にカーブが掛かったデザインのチェアです。

背のルーバーが長く、足元まで伸びています。

後ろ足と座面フレームの接合部に隙間が全てに見られます。

こちらは背のルーバーの下側に位置する、横貫部分です。

上から見るとこのように、かなり急なカーブで作られています。
こういったカーブのかかった材料を解体するのは、叩く場所や力加減や角度を間違えると破損の確率がかなり高くなります。

背の貫のホゾが中折れしてしまっているものもありました。
これはホゾジョインターを使って接合し直します。

1脚ずつかなり時間をかけての解体でした。

大体が同じ箇所のグラつきです。

前脚はこのような仕口です。

上から見た座面、前脚のフレーム部です。
カーブがこのように強くかかっている場合、様々な問題が起こります。
クランプ(締め具)の締める力が真っすぐにかからないため、強く圧着したくても材料がしなって破損のリスクが高まったり、歪んで締めてしまったりします。
またクランプ自体が滑って固定ができなかったり、その場でうまく固定できても時間をかけてバランスがずれて、崩れてしまったりもします。

こういった締め作業において、治具という型を作って安定した圧着を行うための道具を作ります。上下の材料は前脚の角に当てて、90度の足場を確保するための材料です。
右の棒材は、座フレームが内側に大きくカーブしているため、つっかえ棒としてしなりを抑制するものです。

残念ながら、肝心な締め作業の写真を撮影し忘れてしまった為、わかりにくいのですが、前脚にはこのように当てることで、クランプの力が真っすぐにかかるようになります。

前述した通りパーツごとの形状が特殊なので、確実に締め直しを行うため、パーツごとに分けて組み上げていきました
無事にこのように、隙間なく接合部が組み上がり、全体に及んでいたぐらつきは解消されました。

笠木部分です。

こちらはホゾが折れていた部分です。
しっかりと繋がっています。

構造自体はシンプルなのですが、非常に大変な作業となりました。



無事、座面を戻して完成です。
チェアは流通している個体が本当に多種多様です。日常的に丁寧な使用していても、構造上の問題でグラつきや破損が起こりやすい物もあります。
使用中に違和感を大きく感じるようになったら、早めの修理をお勧め致します。