
ウォールナットの無垢材チェア。
4脚の塗装塗り替えの御依頼です。
ウレタン塗装の劣化が著しい背とアーム部分を主に部分剥離を行います。

背に当たる部分が全体的に白く劣化しています。

笠木の上部、また角部分にも傷が多く見られます。

肘掛の面も、塗装が薄くやつれてきています。

全体的に部材が角ばったデザインをしているため、当て傷がより目立ってしまいます。浅い傷の色抜けは傷を慣らしてタッチアップで色付けをします。

角の大きな潰れは切削しすぎると形状が変わってしまい、今度は部分的に違和感がでます。

こういった角の凹みなどは周辺を均一に削ってバランスの良いところで最小限の成形にとどめます。
無垢材にしかできない方法です。

笠木背面の流線と面の境界線がくっきりと見えています。
この椅子の細部にこだわったディティールが伝わってくる大切な場所です。日頃の使用で最も手が触れる箇所です。わずかな丸みを帯びてしまうだけで印象も手触りも大きな違和感が出てしまいます。

上記の事に細心の注意を払って切削します。尚且つ、中途半端に落とすべき傷を残さぬよう何度も傷を確認しながら確実に削ります。

ミニサンダーやスポンジ巻きの紙やすり、最後は手やすりという流れで効率と丁寧さを使い分けながら剥離を進めました。
紙やすりの干渉で塗膜に小傷ができるのを防ぐため、剥離をしない箇所は境界線ギリギリの部分で養生します。
下地処理をしっかり行い、補修すべき箇所を補修したら塗装に入ります。

オリジナルの塗装に合わせて極力薄めに塗膜がつくようにします。
また、褪色している箇所との色味などの差も考慮して薄めに着色をして雰囲気も微調整します。
ここまで全部のバランスを自然光で確認しながら、4脚を一気に塗装で仕上げました。遠目で見ても白茶けた雰囲気がなくなり、木の健康な色味が復活しましたね。

背後も座面以外を仕上げ直しました。

正面から見ると全体的に鮮やかになった様子がわかります。

作業前のルーバー部分(縦の棒材)が白く荒れていた箇所をしっかりと削ってあげればこのように綺麗になります。

肘掛もこの通りです。
無垢材だからこそできる修理ですね。

笠木の背後も一番気を使いましたが、陰影も崩れず何とか形になりました。

大きく凹んでいた角も目立たなくなりました。

こちらは椅子と同時に持ち込まれたダイニングテーブルの脚です。
椅子の出し入れの際、横擦りによって表面に白い線傷が残ってしまっています。

他にも角のチップやささくれも目立ちました。

今回は大きな傷の補修と色抜けが目立たなくなれば、ということでしたので可能な限り着色補修やパテ埋めで傷をカバーしていきます。

こちらもぱっと見、ほとんど目立たなくなりました。

木材は見る方向によって見え方が変化するので自然光などで見たときに一瞬分からない程度の着色でしませるのが無難です。


大きく角が剥離していましたが接着をしてパテ処理後、着色してクリアー塗装です。
今回のように、無垢材の椅子は塗装が褪せてしまっても剥離の切削ができるので、形状が大きく変わってしまうリスクを除けば定期的にメンテナンスを仕上げることで長く使い続けることができます。今回のように特殊なデザインや構造にもよりますが、普段お使いになっている家具をリフレッシュしたいときには是非ともご検討、ご相談くださいね。